2007年度(平成19年度)CACフォーラム開催実績

 

2007年度第1回CACフォーラムセミナー

日時 : 平成19年6月1日(金)13時〜17時
場所 :

東京大学 山上会館小会議室 201, 202 (東京都文京区本郷7−3−1)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.htm

内容 :

《プログラム》

1.開会挨拶  (13:00〜13:10)
  CACフォーラム会長 東京大学大学院工学系研究科  教授 船津 公人 氏


2.講演(T) (13:10〜14:00)
  中外製薬株式会社    長谷川 清 氏
  「ケモメトリックス手法のレビュー(最近のData mining手法の紹介)」

 ケモメトリックスとは、解析データに含まれる規則性やパターンを、統計学の手法を適用することにより明らかにする学問分野である。解析データにノイズが多い場合、規則性が内在している場合、データサンプルが極端に少ない場合には、通常の統計手法(最小2乗法)は適用できない。化学では、このようなデータタイプが多く得られるために、新しい解析手法(ケモメトリックス)の出現が期待されていた。ケモメトリックスは、1970年代から、アメリカの分析化学者Kowalski、スウェーデンの物理化学者Woldらにより提唱され、分析化学を中心にして発達してきた。化合物の構造記述子と活性との関係を調べる定量的構造活性相関(QSAR)、あるいは物性との関係を調べる定量的構造物性相関(QSPR)もこの範疇に入る。現在、ケモメトリックスに関する研究が全世界に急速に増えて、化学の一分野として定着している。
 ケモメトリックスの手法としては、主成分分析、部分最小2乗法、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシーン、遺伝的アルゴリズム、コホーネンネットワークなどがあげられる。また最近、大量の化学データ解析に適した新たな手法(data mining)も開発されている。例えば、Inductive logic programming (ILP), Rough sets theory (RST)などがあげられる。これらdata mining手法により、大量の化学データから構造と活性を決めるruleやpharmacophoreを導くことができ、より実用性が向上した。
 今回、最近のdata mining手法を中心にして、ケモメトリックス手法の紹介をする。


3.講演(U) (14:00〜14:50)
  旭硝子株式会社    山本 博志 氏
  「データベースと情報戦略 ー企業の取り組みー」

 筆者は国家プロジェクトに参加し「フロン代替化合物」の設計を行った。その際には金に糸目を付けず,世界中のデータベースからフッ素化合物の熱物性を集め,解析(推算式の構築)し,逆設計(目標とする熱物性を満足する構造を提案)を行った。このような事が可能であったのは,1.構造と物性の相関が取れていなかった事。2.実際の化合物の合成は非常に困難で試薬も非常に高価であったこと。3.一企業では達成しきれない政治的な要因が絡んでいた事。4.予算が潤沢であった事。に起因したと考えられる。これとは異なり,多くの場合は(船津先生も指摘しているように)データベースを利用するという事は検索のキーワードから手の内をさらけ出すようなものであり,国有のDBは有料化をした方がいいという議論もある。一方,企業に戻り研究を進めてみると,データベースはドイツ系とアメリカ系が席巻し,アジアではそこからダウンロードしたものを違法にインターネット上に公開している例も散見される。日本がどこへ向かおうとしているのかは判然としない。このような状況の中,企業の研究は,いかに情報解析を有効に行って,データベースをナレッジベースに昇華できるか,が鍵となっている。本発表では自己組織化ニューラルネットワークを使ったデータベースの解析例や,いわゆる「熟練工のナレッジ」の情報化を紹介してみたいと思う。

---------------------休憩(14:50〜15:10)----------------------

4.講演(V) (15:10〜16:00)
  星薬科大学薬剤学教室   教授 高山 幸三 氏
  「インシリコ予測による製剤設計の効率化とレギュレーションへの対応」

 製剤設計の高効率化や開発コスト削減の要求に対処するためには、インシリコにおける新しい予測技術を開発することが重要である。またICHQ8やFDA PATに明記されたように、今後医薬品の製造承認には製剤設計に対する科学的根拠が求められるようになる。
 応答曲面法は、実験計画法に従って計測された少数のデータにより製剤処方を検討することができ、処方設計・最適化の支援技術として注目されている。しかし実際の製剤では処方因子と製剤特性の関係が複雑で十分な予測精度が得られないなど実用上多くの問題がある。
 本セミナーでは既存手法の問題点を整理し、多次元スプライン補間、ブートストラップ法、自己組織化マップ等を利用する新たな最適化手法の概要を述べるとともに、実際製剤への応用例を紹介したい。


5.講演(W) (16:00〜16:50)
  株式会社 エス・ティ・ジャパン   増井 秀行 氏
  「IR、NMRスペクトルのための構造解析支援ソフトウエアの紹介」

- IRスペクトルを用いた部分構造解析ソフトウエア「irAnalyze」-

 赤外測定装置からのフルスペクトルをそのまま用い、スペクトルの解析と官能基の帰属の確認を迅速に行うソフトウエアです。400種類以上の既知の官能基グループと、およそ1000の特徴のある赤外バンドの吸収帯を有するデータベースを標準装備し、スペクトル解析を支援して、官能基の帰属をオートもしくはインタラクティブモードで短時間に高精度で行います。また、指定したピークからの官能基の検索や、赤外スペクトルと構造式(Molfile)との対応評価も可能です。

- NMRスペクトル予測ソフトウエア「NMRPredict」(Windows版)-

 最新のアルゴリズムにより、入力構造から立体化学を考慮した1H-NMR, 13C-NMRなどのスペクトルを予測するソフトウエアです。力場計算により立体異性体(コンフォーマー)を計算し、パラメータ化された官能基グループ情報を用いて、1H-NMRスペクトルを予測します。また、13C-NMRスペクトルは立体情報を有するデータベース(HOSEコード)を用いる方法と、ニューラルネットワークを用いる方法の両者で、信頼性の高い予測を行います。

以上二つのソフトウエアのデモも実施の予定です。



CACフォーラム一泊研修会

日時 : 平成19年9月13日(木)14:00〜14日(金)12:30
場所 : 北海道 登別温泉 登別グランドホテル (http://www.nobogura.co.jp/)
      〒059-0551 北海道登別市登別温泉町154
      TEL 0143-84-2101 / FAX 0143-84-2543
内容 : 《プログラム》

9月13日(木) 
1. 会長あいさつ(14:00〜14:10)
東京大学大学院工学系研究科   教授 船津 公人 氏

2. 講演(T)(14:10〜15:00)
九州大学 先導物質化学研究所  教授 吉澤 一成 氏
「量子化学計算による酵素反応へのアプローチ」
 量子化学計算による酵素反応のメカニズムの研究について紹介する。とくに常温常圧でメタンをメタノールに変換するメタンモノオキシゲナーゼの反応について、我々の研究例を中心にお話しする。メタンモノオキシゲナーゼの活性中心には鉄または銅の2核錯体が存在するが、そこでのメタンの非ラジカル的水酸化機構の解説を行う。さらに人工変異酵素(ミュータント)の反応性の予測を量子化学計算から行う。

---------(休憩 10分)----------(15:00〜15:10)

3. 講演(U)(15:10〜16:00)
東京大学大学院工学系研究科   教授 船津 公人 氏
「ドラッグライクネス評価モデルの構築」
 現在の一般的な新規医薬品開発プロセスは、目的の活性を持ち薬物動態が優れたリード化合物の探索から始まる。そして、非臨床試験、臨床試験を通してリード化合物の最適化を行う。このプロセスの中で最も効率化が図りやすく、プロセス全体に影響を及ぼすのはリード化合物の探索である。近年、リード化合物の探索はin silicoスクリーニングを用いて効率化が図られている。これは数百万もの化合物からなるライブラリの中から、活性のある化合物や薬物動態の優れた化合物(ドラッグライク化合物)を抜き出して、その中からリード化合物を見つけるという情報化学的な手法である。活性を示す化合物に対するスクリーニングの研究は、構造活性相関(QSAR)など数多く行われている。しかし、ドラッグライクネスの評価に関しては十分に研究が行われているとは言えない。そこで、化合物ライブラリの中からドラッグライク化合物を効率よく抜き出す方法について研究を行った。本研究の目的は、医薬品と非医薬品の情報を統計的手法によって解析し、ドラッグライクネス評価モデルを構築することである。そして、そのモデルをリード化合物探索段階で使うことで、新規医薬品開発プロセスの効率化を目指す。また、本研究室で開発した構造ジェネレータによって生成された化合物群にそのモデルを適用し、構築したドラッグライクネス評価モデルの有効性について検証を行った。

---------(休憩 10分)----------(16:00〜16:10)

4. 講演(V)(16:10〜17:00)
出光興産株式会社   宮本 真二 氏
「プロセス設計における工学物性推算の現状と課題」
 弊社のような石油精製・石油化学の新規な製造プロセスを構築・設計する場合、あるいは既設装置のブラッシュアップやトラブルシュートを検討する場合、工学物性が必要不可欠である。工学物性は各成分の単独の物性だけでも温度や圧力で変化するし、混合系ではその組み合わせや組成によって変化するために、全てを測定することは不可能である。したがって、何らかの推算が必要となる。先人たちの多大な努力により、ほとんどの工学物性は推算手法が確立されおり、既存のプロセスシミュレータにはそれらが組み込まれている。しかしながら、その推算精度は保証されたものではなく、ユーザーの責任において用いるべきものとされている。我々ユーザーの立場から物性推算の課題を挙げると以下のようになる。

@1つの物性に対して複数の推算手法が提案されており、その選択には任意性があること(もしくは専門の知識・経験が必要なこと)
A選択した推算法の精度確認が困難で、全面的に信頼できないこと
B推算法が測定データを基に開発されていることが多く、測定データのない系の精度が劣ること

今回は、我々が日頃用いている物性推算手法の概要と上述のような問題点について説明する。特に、Bについてはコンピューターケミストリーの応用が期待されている。

---------(休憩)----------

5. 夕食・意見交換(18:00〜20:30)


9月14日(金) 

1. 講演(W)(9:30〜10:20)
富士通株式会社   朝永 惇 氏
「in silico Fragment-Based Drug Discovery」
 近年、ゲノム情報、パスウェイ情報、タンパク質構造情報などに基づく分子標的医薬の研究が精力的に進められている。その中で、Fragment-Based Drug Discovery が注目されており、我々は IT による フラグメントベースの de novo 薬物設計に取り組んできた。設計プロセスは、候補構造の発生とそれらの標的タンパク質に対する結合自由エネルギーの高精度計算よりなる。講演では、その概要を紹介するとともに、開発した方法によって、最近、幾つかの既知医薬化合物の構造を再現できることが確認され、同時に、興味深い新規構造も得ているので、その結果も紹介する。更に、Drug Design へ向けての、関連する我々の周辺技術も紹介する予定である。

---------(休憩 10分)----------(10:20〜10:30)

2. 話題提供(10:30〜11:20)
山口大学(株式会社 Transition State Technology)   山口 徹 氏
「in silico合成経路開発」
 in silico合成経路開発はコンピュータのみを用いて、実際に実験合成可能な経路を開発する技術である。大学・企業等において本技術を導入することにより、研究開発の効率化と費用の大幅な削減が期待できる。本講演では、in silico合成経路開発について、その実現のためにこれまで我々が取り組んできた遷移状態データベース(TSDB)について、TSDBの一般公開とその活用法及び例について述べた後、TSDBを基盤にin silico合成経路開発に挑戦する山口大学発ベンチャー企業(株)Transition State Technologyの取り組み、業務内容及び今後の展開について紹介する。

---------(休憩 10分)----------(11:20〜11:30)

3. 部会報告(11:30〜12:00)


2007年度第2回CACフォーラムセミナー

日時 : 平成20年2月5日(火) 13:30〜17:00
場所 :

東京大学 山上会館小会議室 201, 202 (東京都文京区本郷7−3−1)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.html

内容 :

《プログラム》

1.開会挨拶  (13:30〜13:40)
  CACフォーラム会長 東京大学大学院工学系研究科  教授 船津 公人 氏

2.講演(T) (13:40〜14:40)
東京大学 化学システム工学専攻    荒川 正幹 氏
「分子設計のための統合システム「ToMoCo」の開発とその応用」

 効率的な医薬品開発・分子設計を行うためには、コンピュータを用いた高度な解析が必要不可欠であり、ケモインフォマティックス、ケモメトリックスの重要性はますます高まってきているといえる。船津研究室においてはかねてより、有機化合物の合成経路設計、各種スペクトルからの構造推定、反応予測、構造活性相関解析などを対象として、新規なケモインフォマティックス技術の開発とその応用に取り組んでいるとともに、これらに関する解析を行うためのソフトウェアの開発にも力を入れている。ToMoCo (The total system for molecular designs by the computer chemistry laboratory) は、この一環として開発を進めているシステムであり、主に分子設計・構造活性相関解析に関する機能を集約したものである。本発表では、ToMoCoに実装されている各種機能の説明とその応用事例の紹介を行った後、今後の開発計画について示す。以下、ToMoCoに実装されている主な手法である、CoMFA法、分子構造重ね合わせ法、LigConstructor、GARGS法について簡単に紹介する。

CoMFA法
 CoMFA法は3次元構造活性相関解析の代表的な手法である。一定間隔に配置したプローブ原子と対象分子との間の立体的・静電的相互作用を求めて構造記述子とし、生物学的活性値との間でPLS法による回帰を行うことにより構造活性相関モデルを構築する。このモデルを用いることで、活性が未知の化合物の活性予測や、活性に大きな影響を与えると思われる領域の特定が可能となる。ToMoCoを用いることで、CoMFA法を用いた一連の解析を効率的に行うことが可能である。

分子構造の重ね合わせ法
 CoMFA法などの3次元構造活性相関解析手法を用いて優れたモデルを構築するためには、対象とする化合物群について適切な重ね合わせを行うことが必要となる。ToMoCoには、通常の原子を基準とした重ね合わせ法の他に、本研究室で開発された手法が実装されている。この手法では、重ね合わせを行う2つの分子上に、疎水性、水素結合受容性などの特徴を定義し、Hopfield neural network (HNN) を用いてそれらの対応付けを行うことによって適切な重ね合わせの探索が行われる。

LigConstructor
 本研究室においては、進化的計算手法を用いて新規な薬物候補構造の自動創出を行うことを目的としたシステムとしてLigConstructorを提案している。LigConstructorでは、CoMFAモデルによる予測活性値を評価基準として分子構造を仮想的に進化させることで、活性が高いと期待される薬物候補構造を生成する。CoMFAモデルを評価基準としているため、タンパク質の3次元構造が明らかになっていない場合においても適用することが可能である。

GARGS法
 我々はCoMFA法を用いた構造活性相関解析において、活性の説明に重要な役割を果たしている領域を自動的に選択するための手法としてGARGS法を提案している。GARGS法では、CoMFAフィールドをいくつかの小領域に分割し、GAを用いて活性を説明するために有効な領域の探索を行う。これにより、シンプルで予測性の高い構造活性相関モデルを構築することができ、より効率的な分子設計が可能となる。


---------------------休憩(14:40〜14:50)----------------------

3.講演(U) (14:50〜15:50)
テンキューブ    千田 範夫 氏
「ウィルスからスーパークリエーター −分子計算支援システムWinmostarの紹介−」

 偶然に開発がスタートしたWinmostarは、現在多くの大学・企業で、教育・研究用として利用されている。Winmostarは、分子のモデリングから分子軌道計算、計算結果の表示までをWindows上で実現するソフトウェアである。MOPAC6、MOPAC7とCNDO/S(紫外・可視吸収スペクトル計算用)を内蔵し、GAMESSとGaussianのインターフェイス機能もあり、Winmostar一つでこれらのプログラムを利用した計算が可能になっている。
 フリーソフトでありながら、市販ソフトに劣らない高機能を有するWinmostarは、マウスによるグラフィカルな分子の編集だけでなくZ-Matrixと分子を見比べながらの直接編集が可能、動作が軽快など、従来のGUIとは一線を画したソフトウェアである。
 Winmostarの開発経緯、開発方法、操作法、隠れた裏技、今後の開発動向についても、作者自身が紹介する。


---------------------休憩(15:50〜16:00)----------------------

4.講演(V) (16:00〜17:00)
東北大学 応用化学専攻   准教授 高羽 洋充 氏
「量子論に基づくマルチレベル計算化学と化学工学への応用展開」

 次世代の材料開発技術として、電子・原子レベル、メソスケール、マクロスケールなどの異なった階層レベルで発生する開発課題を総合的に考慮した設計手法の構築が強く求められている。特に最近では、コンピュータ性能も飛躍的に進歩しデスクトップコンピュータでも大規模な計算化学シミュレーションが可能となってきており、化学反応ダイナミクスのより精密な電子・原子レベルのシミュレーションに基づく理解が容易になれば、マクロレベルでの実験研究が飛躍的に発展する可能性がある。しかしながら、その実現には、従来は全く異なった学問分野として発展してきた量子化学、分子動力学、化学工学、流体力学などのシミュレーション手法を、どのように連携させてマクロスケールの現象につなげていくかの方法論の構築が必要不可欠である。本講演では、計算速度を向上させることで、量子論とメソスケールを繋げることを可能とした超高速化tight-binding分子動力学法や、量子論に基づく物性シミュレータなど新しい計算化学手法をベースに、ミクロスケールからマクロスケールを繋ぐ試みを紹介する。


  

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