2010年度(平成22年度)CACフォーラム開催実績

 

2010年度第1回CACフォーラムセミナー

日時 : 2010年7月2日(金) 13:30~17:00
場所 :

東京大学 山上会館小会議室 201, 202(東京都文京区本郷7-3-1)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.html

内容 :

《プログラム》

1.開会挨拶  (13:30~13:40)
  CACフォーラム会長 東京大学  教授 船津 公人 氏

2.講演(Ⅰ) (13:40~14:40)
明治薬科大学   植沢 芳広 氏
「薬物動態に及ぼす柑橘類果汁の影響 ~薬物および原因物質のQSAR解析~」
 グレープフルーツジュースは多くの医薬品の薬効を増強することが知られている。原因物質であるフラノクマリン類が消化管異物バリア機構を撹乱することにより、種々薬物の吸収率を上昇させてしまう。この薬物食物間相互作用は、副作用の原因となることから臨床上重要な注意事項として服薬指導等の対象とされている。本相互作用による吸収率の変化は薬物によって大きく異なることから、相互作用強度予測モデルの構築は患者の食物嗜好を考慮した投薬設計に有用であると考えられる。本講演では、既知臨床研究より算定した相互作用強度に基づいて構築したジヒドロピリジン系高血圧薬のQSARモデル、およびフラノクマリン類の薬物代謝酵素阻害活性に対するQSARモデルを紹介する予定である。

3.講演(Ⅱ) (14:40~15:10)
東京大学   助教 荒川 正幹 氏
「可視・近赤外スペクトルを用いた土壌成分値予測モデルの構築」
 近年、農業における生産性の向上や環境負荷の軽減を目指した精密農業に関する研究が盛んに行われているが、その中で重要となるのが、土壌中の水分量や有機物量を迅速に、かつ正確にモニタリングする技術の開発である。そこで我々は、ケモメトリックス手法を用いて、土中で測定される可視・近赤外スペクトルから土壌成分値を推算するモデルの構築を行っている。本発表では、我々が提案したGAWLS (Genetic Algorithm-based WaveLength Selection) 法による波長領域選択の結果を中心に紹介する。

---------------------休憩(15:10~15:30)----------------------

4.講演(Ⅲ) (15:30~16:30)
静岡シブヤ精機株式会社  二宮 和則 氏
「農業分野におけるケモメトリックス技術の応用事例」
 日本で流通する青果物の多くは、近赤外分光法を用いた「光センサー」により、糖度や酸度の含有量、内部障害の有無が1個ずつ測定され、産地毎の販売戦略に基づき、選果選別されて出荷されている。
 このセンサー技術において、ケモメトリックスは極めて重要な役割を果たしており、多様な条件下においても常にロバストな計測が可能な統計モデルが必要であり、それを導く数値解析手法に大きく依存する。
 本講演では、農業分野におけるケモメトリックス技術の様々な応用事例を紹介する。


5.講演(Ⅳ) (16:30~17:00)
東京大学 船津研究室   山下 洋輔 氏
「近赤外スペクトルを用いた果物の非破壊内部品質検査」
 近年、食品産業の出荷工場は自動化が進んでいるが、果物の出荷工場においては、いまだ目視や手作業による検査が主流である。そこで、我々は果物内部の糖度、蜜および褐変の品質ついてそれぞれ効率的に波長選択を行いながら、迅速に予測を行い、モデル構築を行っている。本発表では、モデル構築結果とモデルのオンライン適用についての展望を紹介する。



2010年度CACフォーラム一泊研修会

日時 : 2010年10月04日(月)~05日(火)
場所 : 愛知県蒲郡市 ホテル竹島 (http://www.hotel-takeshima.co.jp/)
〒443-0031 愛知県蒲郡市竹島海岸
TEL 0533-69-1256 / FAX 0533-67-7439
内容 : 《プログラム》

10月04日(月)
 
1. 会長挨拶 -CACフォーラム設立20周年を記念して- (13:00~13:40)
東京大学   教授  船津 公人 氏
「予測と設計のためのケモインフォマティックス」
 CACフォーラムは今年で設立20周年を迎えた。予測と設計の役立つケモインフォマティックスを目指した活動をその成果を振り返り、今後の方向性などを語る。

2. 講演(I)(13:40~14:40)
お茶の水女子大学   名誉教授  藤枝 修子 氏
「パソコンと共に歩んだ非線形化学実験から女性研究者支援への展開」
 CACフォーラムは、1990年10月5日にCHEMICS研究会として発足し、今年で20周年を迎える。この間に化学分野のコンピュータ利用は大型電子計算機とマイクロコンピュータに二極化した。後者はCPU全般の演算速度やメモリー容量などが急激に進歩し、PCとして利用範囲や利用者数を爆発的に増やした。CACフォーラムの20周年にちなんで、数々の懐かしい思い出話などを披露したい。続いて、金属光沢をもつ化合物としてのタングステンブロンズの分光化学、自作の熱交換熱量測定法、非線形科学・非平衡化学系の実例としての化学振動反応、微小重力場の化学実験、環境データのケモメトリックスなどの事例を簡単に紹介する。さらに、定年後の仕事として現在も継続中のアフガニスタンの女子教育支援、理工農学分野の女性研究者支援についても紹介する。

---------(休憩 20分)----------(14:40~15:00)

3. 講演(II)(15:00~16:00)
東京大学   教授 宮野 悟 氏
「スパコンで焙り出す薬剤応答遺伝子ネットワーク」
 複雑な生命システムを理解するには、これまでの分子生物学的方法論だけでは無理だということが認識され、スーパーコンピュータを利用した大規模データ解析による生体内分子ネットワークの解析や、生命システムをモデル化し、シミュレーションモデルと実験データとを融合させるなどの方法論が必要となってきている。本講演では、スーパーコンピュータを活用して、予測能力をもった数千の生体分子のネットワーク「予測する地図」をデータから構築するための数理的方法とその応用について述べる。状態空間モデルやベイジアンネットワークなどに基づいた、生命システムを計算によって「見える化」する技術を紹介しながら、大規模遺伝子ノックダウンや抗がん剤などの薬剤応答時系列遺伝子発現データからの大規模遺伝子ネットワーク解析について述べる。
 
4. 講演(III)(16:00~17:00)
理化学研究所   泰地 真弘人 氏
「次世代スパコン計画とその創薬応用」
 理化学研究所では現在、10PFLOPS(1京回演算/秒)の性能をもつスーパーコンピュータ「京」の開発を進めている。また、その生命科学分野での利用を推進するため、「次世代生命体統合シミュレーション」プロジェクトでソフトウェア開発を進めている。講演では、これらの計画の概要と共に、我々が進めている分子シミュレーションを援用した薬剤スクリーニング手法について紹介したい。この手法では、分子ドッキングにより得た複数の結合構造に対しシミュレーションを行い、MM/PB-SA法で結合自由エネルギーを推定することにより精度を向上させることに成功した。また、今後のスーパーコンピュータの利用計画についても概略を説明する。
 
---------(休憩 90分)----------(17:00~18:30)

5. 夕食・意見交換(18:30~21:00)



10月05日(火)

1. 講演(IV)(9:00~10:00)
豊橋技術科学大学   准教授  後藤 仁志 氏
「結晶多形構造の予測技術の現状と今後の展開」
 計算化学が産声を上げた1960年代の頃から、化学者が解決を期待した課題の一つとして、結晶多形問題がある。つまり、ある有機化合物がどのような結晶構造を取るのか?そして、その物性は?それは制御できるのか?こうした研究者からの要望は、最近、ますます強くなるばかりである。特に、創薬や光学材料、そして燃料電池や太陽電池などの新エネルギー分野において、この結晶多形の構造と物性の予測は、日本が強みを残す最先端産業が国際競争力を維持するために必要な基盤技術であると考えても良いかもしれない。来年早々に発表を予定しているCONFLEX7では、これまでの結晶計算機能をさらに発展させた結晶多形予測機能を導入する。現在、その検証作業を進めている中で、ケンブリッジ結晶学データセンター(CCDC: Cambridge Crystallographic Data Center)が主催する構造予測ブラインドテストのデータを使った検証結果について概説するとともに、今後の展開について述べる。
 
2. 講演(V)(10:00~11:00)
大阪大学   教授  高木 達也 氏
「最近の多変量解析・データマイニング手法とその医薬品化学への応用」
 ケモメトリックスの近年の発展は著しい。ほとんどありとあらゆる多変量解析、データマイニング法が俎上に上り、分析化学に、医薬化学に、有機化学に、或いは環境化学に応用されている。カーネル諸法、Adaboostの応用は枚挙に暇が無く、Y. Zhaoらは、致死的疾患に対する最適なプロトコルの発見にQ学習を用い、ID3型決定木は、C.Z. Yeらによってグリオーマの悪性度の予測に使用された。中には、リンゴを切るのに斧を使用しているようなものもあるとは言え、手法はあって困ることはない。
 今回は、当研究室で俎上に挙げた、MDS、指紋照合型SOM、簡易ノンパラメトリック回帰+PLS法、ICA型ニューラルネット、改良型回帰判別分析法などを主として取り上げる。これらを組み合わせて使用することにより、肺腺癌患者のMicro Array データから、有用な情報を抽出することができたり、押収麻薬ルートのプロファイリングへの情報提供ができるなど、重要な成果を得ることができる。当日は、今後の展望も加えてお話したい。


---------(休憩 20分)----------(11:00~11:20)

3. 講演(VI)(11:20~12:00)
株式会社エス・ティ・ジャパン   増井 秀行 氏
「Ion Mobility Spectrometry (IMS) -洗浄バリデーション、封じ込め対策への応用-」
 医薬品関係の高薬理活性の原薬および製剤などのコンテインメント(封じ込め)や、プロセス容器などの洗浄のバリデーション方法として、IMSが注目されている。クロスコンタミの防止や、作業者の安全確保、製品品質確保などのため、現在はHPLCによる分析が主流で、10~30分を必要とする。ここで紹介するIMS法は、大気圧化学イオン化TOF-MS(飛行時間型質量分析)とも呼ばれる分析法で、微量成分のガス・フェーズのイオン易動度により化合物の定性、定量分析をおこなう。微量成分の高速定量分析(一般的に10~20秒)が可能で、サブナノグラムの感度を有し、広範な化合物に対応でき、ルーチン分析が可能である。

4. 昼食(12:00~13:00) 昼食後解散


2010年度第2回CACフォーラムセミナー

日時 : 2011年3月4日(金) 13:10~17:00
場所 :

2011年3月4日(金) 13:10~17:00

《場所》 (社)日本化学会 化学会館 601A会議室(東京都千代田区神田駿河台1-5)
       http://www.chemistry.or.jp/kaimu/office/map.html

内容 :

《プログラム》

1.開会挨拶  (13:10~13:20)
  CACフォーラム会長 東京大学大学院工学系研究科  教授 船津 公人 氏

2.講演(Ⅰ) (13:20~14:10)
大阪大学 薬学研究科  助教 川下 理日人 氏
「ドッキングスタディを用いた抗インフルエンザ薬の薬剤耐性予測」
 2009年メキシコで発生した新型インフルエンザは世界中にパンデミックを引き起こし、感染症の脅威を世に知らしめた。インフルエンザ対策として、流行予測株に対するワクチンが毎年開発されているものの、その効果は限定的なものであり、感染患者に対する治療としてオセルタミビルなどの薬剤が用いられている。一方、近年オセルタミビル耐性ウイルスの出現が問題となっているため、これを効率的に予測することができれば、抗インフルエンザ薬の適正使用や、新たな薬剤耐性変異予測にも繋がると考えられる。このような背景下、我々はドッキングスタディを用いた抗インフルエンザ薬の薬剤耐性予測法を開発したので、本講演にて紹介する。

3.講演(Ⅱ) (14:10~15:00)
近畿大学 薬学部  助手 中村 真也 氏
「COMBINE解析法の応用とその可能性」
 Comparative Binding Energy (COMBINE) 解析法は、1995年Dr.Ortizらにより発表された、3次元的構造活性相関手法のひとつである。この手法はターゲットタンパク質と化合物との相互作用を、アミノ酸残基ごとの相互作用に分解して回帰分析を行うという特徴を持つ。従来、構造活性相関手法は骨格が共通する化合物群に対して適用されることが多かったが、我々は異なる骨格間でも精度よく予測が行えることを示してきた。これはin silico創薬で近年重要となりつつあるScaffold Hopping等にも応用が可能であることを示唆しており、我々はこの手法を様々な形で応用し、新たな創薬手法を確立しようと検討している。本講演ではCOMBINE解析法について、他のグループによる応用事例も含め、その可能性を紹介する。

---------------------休憩(15:00~15:20)----------------------

4.講演(Ⅲ) (15:20~16:10)
北里大学 薬学部  准教授 合田 浩明 氏
「NMR測定とin silico創薬技術を組み合わせたキチナーゼ阻害剤の相互作用解析」
 我々は、天然由来のアミノ酸5残基からなる環状ペプチド性キチナーゼ阻害剤argifinおよび霊菌のキチナーゼB(ChiB)に基づいた創薬基礎研究を行っている。最近、argifin由来のジペプチドが、argifinに匹敵する強さでChiBの活性を阻害するという興味深い実験結果が得られた。このジペプチドが阻害活性を保持できる要因を明らかにすることができれば、今後の低分子量キチナーゼ阻害剤開発に有益な情報を与えることができる。そこで、本研究では、NMR測定および当研究室で考案された相互作用に重要な水分子(架橋水)も考慮するin silico創薬技術を組み合わせて、このジペプチド阻害剤とChiBの相互作用について精密な解析を行う。また、架橋水を取り込んだようなジペプチド誘導体のin silico分子設計についても報告したい。

5.講演(Ⅳ) (16:10~17:00)
東京大学 化学システム工学科  准教授 牛山 浩 氏
「新規材料設計を目指した理論・計算化学によるアプローチ」
 化学反応は化学結合の組み替えであり、反応の理解には、結合を形作る電子の運動を記述する量子力学によるアプローチが不可欠である。我々のグループでは、触媒や電極反応などの工学的に重要な反応の反応機構の解明を目指して、主に量子化学やバンド計算の手法と分子動力学的手法を組み合わせて、理論・計算化学の立場から研究を進めている。本講演では、初めに化学反応の理解を目指した理論的な手法・アプローチ方法の現状を説明する。続いて、理論・計算化学を不均一触媒反応の反応機構の解明や燃料電池で用いられるプロトン透過膜におけるプロトン移動機構の解明へ応用した例を示しつつ、どんなことがどの程度理解できるのか紹介する。最後に、理論・計算化学が新規材料開発にどのように貢献できるか議論する。


  

[ ホーム ]


  このページに対する、ご意見・ご感想はこちらまで
Copyright 1999-2011 CAC Forum All right reserved.